ワインで有名なブルゴーニュ公国の旧都ボーヌに、世界一とも謳われる 医学史資料館 Hôtel Dieu をたずねました
 ボーヌは大変小さい街ですが、ブルゴーニュワインの集積地として非常に重要な意味を持ち、毎年11月に行なわれるワイン祭りには世界中からワイン通が押し寄せるそうです
 Hôtel Dieu入り口

 この地を支配していたブルゴーニ公国のフィリップ善良公の財務長官だったニコラ・ロランは妻ギゴーヌ・サランと共に、1443年貧い病人や行き倒れとなった巡礼者を救う慈善病院の建設を行い、病院は8年の歳月をかけて完成しました

 この慈善病院の運営費として彼はブドウ畑を病院に寄付し、そこから作られるブドウからワインを作り、ワインを売ったお金で病人に無償で施療したのです

 彼の慈善活動に共感した人々は競ってワイン畑を病院に寄贈し、現在では60ヘクタールものブドウ畑を所有しています
 ワインは11月の第三日曜日に開かれるオークションにかけられ、世界中のワイン関係者に競り落とされます。ここでの落札価格はその年のブルゴーニュワイン価格に影響を与えると言われています

 オークションで得られた利益は、Hôtel Dieu の保全と、1971年に別の土地に移った市立病院の運営費に充てられています

 各々のワインボトルのラベルの下端にはオークションの落札者名が記されており、このワインの落札者は日本の山信商事であることが解ります
 大病室(貧しきものの広間)

 大病室の奥(ステンドグラスの下)には礼拝所があり、病気に臥した人でもミサが聞こえるようにという配慮がなされています
 大病室のベッド

 当時のベッドはもっと幅広く、数人の患者が一つのベッドに寝ていました
 聖ユーグの部屋

 身分の高い者達の病室

 マネキンにより当時の様子が再現されています
 聖ニコラの部屋

 重傷者を収容したこの部屋は、病院の歴史を紹介する資料室となっていました
 薬局

 膨大な数の薬瓶・壷が展示されていました
 当時の薬局の様子を描いた絵画
 厨房

 どのような病院食が作られていたのでしょうか
 正面の地味な屋根に対して、内側の屋根は15世紀以来ブルゴーニュの伝統的建築様式として知られるフラマン様式のモザイク模様で飾られています。1337年〜1453年まで続いた百年戦争のさなかに建築されたこの建物は、落ち着かない社会情勢の中、略奪を避けるために外観は地味にしたと言われています
 慈善病院作りは当時の為政者にとって、自分の名前を残すブームに乗っただけの偽善行為であったとの説もありますが、そこで行なわれていた医療だけは真の人間愛に満ちたものであった事を信じたいと思います