浜松医科大学医学部附属病院 集中治療部の取り組み-

浜松医科大学医学部附属病院 集中治療部 青木善孝

 

当院は19805月に麻酔科をベースとした集中治療部門(Intensive Care Unit, ICU)として設立された、歴史のあるICUです。現在は術後予定入室患者、内科系重症患者、院内急変患者が当部門の管理下に集まり、各主治医科との連携で重症管理を実施しています。集中治療医学会専門医は11名(現在麻酔科所属者も含む)と全国トップクラスの人数を誇り、医師・看護師が協力して24時間365日重症患者のためのベッド確保、受け入れ態勢をとっております。

毎日午前中に集中治療医と主治医、看護師、薬剤師、臨床工学技士などが集まって多職種カンファレンスを実施し、患者の病状や診療方針について情報共有し、治療方針を決定しています(写真1)。またリハビリ科の医師と作業療法士、言語療法士とともに毎朝830分からリハビリテーション回診を実施し、集中治療後症候群(Post Intensive Care Syndrome, PICS)予防を目的として早期リハビリテーションを実践しています(写真2、3)。また感染対策チームの医師や栄養士、医療ソーシャルワーカーとも定期的に情報共有・意見交換を行い、それぞれの分野からの専門的なフィードバックを受けています。


現在ICU病床は12床で運営しており、2019年度の入室患者は1175例で、ICU死亡23例(2.0%)、病院内死亡63例(5.4%)でした。入室理由は消化器腫瘍術後(10.3%)、大動脈ステント術後(8.6%)、椎弓/脊髄手術術後(7.9%)の順に多く、非手術では急性心筋梗塞(4.4%)が最多でした。

ICUの質を保つ試みとして日本ICU患者データベース(Japanese Intensive care PAtient Database, JIPAD)に参加し、他施設のICUと治療比較を通して自分たちの診療を見直しています。例として写真4に成人全例の重症度スコアと死亡率を提示しますが、全施設より重症度の高い患者を低い死亡率で管理できたことが分かります。

大学附属病院として日本集中治療医学会(以下、ICU学会)の仕事も積極的に請け負っております。部長の土井はICU学会の機能評価委員会委員長を務めています。私はJIPADのワーキンググループメンバーを務めさせていただいています。ICU学会と日本救急医医学会合同で作成した「日本版敗血症診療ガイドライン2020」の作成にも、当部門から4名(土井、加藤弘、鈴木祐、青木)のメンバーが参加しました。自施設だけでなく日本全体の集中治療医学の水準向上に貢献できるよう尽力しています。

<当院で研修を考えてくれている若手医師へのメッセージ>

麻酔科を背景とする集中治療部発足が示すように手術室との協力・連携は緊密で、手術室からICU治療までの途切れのない周術期診療を学ぶことができます。それぞれの科と協力して集中治療部門全体の質の向上を目指すとともに、麻酔科単独では経験できない疾患の管理を通じて医師としての診療能力の向上にも役立ちます。「麻酔科だから手術室内だけで良い」という時代ではなく、総合力を持った麻酔・集中治療医に育って欲しいと考えています。

当施設は日本集中治療医学会専門医認定施設であり、集中治療専門医受験資格が取得できます。大学病院ならではの奥行きのある臨床、研究、教育が可能です。麻酔科をベースとした働き方改革も医局長を中心に考えられており、変形労働制を利用して負担がかからないように留意されています。学会や各種研修会にも参加可能で、どんな方でも働きやすい職場です。是非、お気軽に見学に来てください!