浜松医科大学麻酔科蘇生科の心臓麻酔研修について

浜松医科大学医学部附属病院 麻酔科蘇生科  和久田 千晴

 

はじめに
 当院の開心術は年間およそ200例と症例数が多く、弁手術や冠動脈バイパス術の他に大血管手術が多いのが特徴です。またハイブリッド手術室を設置し、2017年6月よりTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)が開始されました。若手麻酔科医のスキルアップの1つとして、2名の心臓血管麻酔専門医のもと日々心臓麻酔の研修を行っています。

後期研修医の研修への取り組み
 当院では後期研修医が心臓麻酔を担当する場合には上級医と2人以上で術中の管理を行っています。観血的動脈圧ラインの挿入に始まり、中心静脈カテーテルや肺動脈カテーテルの挿入、術中の経食道心エコーなど心臓麻酔管理に必須の手技や管理方法について学びます。

 

左:後期研修医の滑川美南先生

右:経食道エコーの指導を行う鈴木興太先生

 また浜松医科大学麻酔・蘇生学講座の麻酔後期研修は、大学で1年研修した後に市中病院で麻酔研修を行うのが一般的です。しかし静岡県内の研修病院に必ず心臓外科があるとは限らず、以前は心臓麻酔から一時離れてしまうことがありました。そこで2017年度より心臓外科のない市中病院に在籍する後期研修医を対象に、月2-3回の頻度で大学に研修に来て頂き、心臓麻酔を行う機会を設けました。これにより心臓麻酔から離れてしまう事による心臓麻酔への不安感を軽減できれば良いと考えています。2019年3月の時点では、4名の後期研修医が大学での心臓麻酔の研修を行っています。

JB-POTについて
 経食道心エコーは心臓麻酔の術中管理において必要不可欠なモニターでリアルタイムでの心機能や心室容量の評価が可能です。当科では、JB-POT(日本周術期経食道心エコー認定委員会)による心エコー講習会の受講を推奨し、現在5名のJB-POT合格者が在院しています。

多職種連携について
 心臓麻酔は、言うまでもなく、多職種との連携、情報交換が必須で、チーム医療の実践が周術期において肝要です。そこで当院では心臓外科医・体外循環技師・看護師・輸血部を交えて、週2回の術前カンファレンスを行っています。そこでは患者の術前状態に加え術式、予定体外循環方法、輸血を含めた麻酔管理について多職種で検討をしています。

おわりに
 当院では豊富な心臓手術に加え、2017年6月からTAVIが開始され、2019年3月現在までに29症例が施行されました。またVAD(補助人工心臓)装着術などの今まで当院で施行されていなかった症例も行われるようになってきています。心臓麻酔は麻酔科医の術中管理における役割が多く、とてもやりがいのある分野だと思います。私もまだまだ勉強中の身ですが、今後も当院の心臓麻酔の発展・充実に貢献していけたらと思います。

左:当院の体外循環技師 大村守弘技師

右:和久田千晴