浜松医科大学医学部附属病院における小児麻酔の特徴と現況

浜松医科大学医学部附属病院 麻酔科蘇生科 八木原 正浩
 

 はじめに
 当院は県内に国内有数の小児病院である静岡県立こども病院があるため、小児手術が少ない状況が続いておりましたが、近年件数は増加傾向にあり、開胸や開腹手術も施行されるようになってきました。2017年に小児外科が3人体制となり、新生児科からの手術依頼も増加してきております。今回は当院の小児麻酔の特徴と現況をお伝えしたいと思います。

麻酔科蘇生科小児担当 八木原 正浩

手術室看護師小児担当 石川 恭子

①症例数、術式
 2015年に私が当院に赴任して、1年間の10歳未満の手術件数は298件でした。3歳未満104件、1歳未満40件、新生児4件と、少ないながらも小さい児たちの症例もあります。術式としては斜視手術60件、扁桃・アデノイド摘出32件、鼡径ヘルニア・精巣固定32件、鼓室形成・人工内耳20件と小手術が多いですが、食道閉鎖根治術、鎖肛根治術、肺葉切除術、Ramstedt手術、先天性胆道閉鎖症手術(葛西手術)も2015年度に施行されています。複雑心奇形の手術はありませんが、ASD・VSD根治術、PDA結紮術などの心臓手術も行われています。2016年以降では、NUSS法、CCAM、褐色細胞腫、食道重積症、小腸閉鎖、腸回転異常なども施行されております。また、整形外科領域では先天性臼蓋形成不全の骨盤骨切り術、下肢延長手術などの術式が増加しております。2016年からは、大きな手術の術前には、麻酔科、小児外科、小児科、手術室看護師による合同カンファレンスを施行しております。

②小児硬膜外麻酔
 当院の小児麻酔の1番の特徴は小児硬膜外麻酔です。前述の開胸・開腹手術では新生児から積極的に硬膜外麻酔を併用しております。現状では1年間に50例前後の硬膜外症例があります。小児の硬膜外麻酔は全例全身麻酔導入後に施行するため、安全に施行する様々な工夫を行っております。小児専用の硬膜外麻酔キットを使用し、体重から穿刺深を予測【(体重+10)×0.8㎜】、点滴法で抵抗消失を確認、超音波を用いた薬液注入の確認、正中法での穿刺などです。安全性を高め、的確に指導すれば、手技的には比較的難易度は低く、後期研修1年目の先生たちにも施行していただいております。現在までに明らかな合併症は起こさず、有効な術後鎮痛を提供しております。


③児の不安への対策
当院では、小児病棟において保育士によるプレパレーション(マスク導入の練習、手術室の様子の紹介など)、親子同伴入室、におい付きマスクでのマスク導入、DVD視聴などを行っています。前投薬は、効果に個人差があり、呼吸抑制のリスクを考え、施行しておりません。精神発達遅滞などで、どうしても術前の鎮静が必要な場合には、呼吸抑制の少ないデクスメデトミジンの点鼻などを使用しています。また、末梢静脈路固定後にキャラクターのシールを貼っていますが、手術室看護師が手作りしてくれています。小児病院と異なり、手術室のデコレーションなどはできておりませんし、小児麻酔に携わる人数を増やして、より一層多職種での連携を深めていきたいと考えております。
 手術室看護師のお手製キャラシール

④ 覚醒時興奮の対策
小児の全身麻酔で切っても切れないのが覚醒時興奮です。短時間小手術が多い当院では、セボフルランでのマスク導入後、そのまま吸入麻酔で維持する症例がほとんどです。吸入麻酔で高頻度(30-80%)に起こるとされている覚醒時興奮を予防するため、適切な術後鎮痛と低い吸入麻酔濃度での覚醒を心がけております。前述の硬膜外麻酔は呼吸抑制を起こしやすい小児において、十分な術後鎮痛を提供でき、非常に有用となっております。硬膜外麻酔を施行できない症例では、覚醒前に自発呼吸を出し、呼吸回数をモニタリングしながら、フェンタニルを少量分割投与して、安全に術後鎮痛をはかっております。また、先天的に憤怒けいれんなど無呼吸発作を起こしやすい児では、積極的にデクスメデトミジンを使用して、呼吸抑制のリスクを最小限に鎮静し、帰室時の安全に努めています。

⑤ 小児麻酔研修
当院では、静岡県立こども病院と連携し、年に1人程度半年から1年のこども病院での小児麻酔研修も行っております。より多くの症例数を経験したり、複雑心奇形の小児心臓麻酔を経験したい若い先生たちが増加してきております。

おわりに
当院では、小児手術が徐々に増加してきておりますが、まだまだ小児麻酔に携わる麻酔科医が足りないのが現状です。私自身は、日本小児麻酔学会で小児気道ハンズオンのインストラクターをさせていただいたり、アメリカ小児麻酔学会に参加させていただいたりしております。海外の小児病院の見学に行くと様々な新しい発見もあります。2020年には日本小児麻酔学会とアジア小児麻酔学会が日本で同時開催されます。今後も小児麻酔学会への参加をはじめ、1人でも多くの小児麻酔認定医をとれるような麻酔科医の育成、教育に邁進していきたいと思います。